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小説「バンギャル ア ゴーゴー」バンド追っかけ女子の話



全部読みましたー。面白かった!オーケンが最初におすすめしてた当初は気になってたけど、ハードカバーでボリュームあるので文庫を待ってたんだけども出なくて。ハードカバーでも読んでよかった。
物語の時代は、90年代のヴィジュアル系ブームで、北海道の中学生「えり」がヴィジュアル系バンドにはまって、追っかけになって高校中退して上京して18歳までの話。
リンダリンダラバーソール」とは違い、バンドは実名ではなくて架空のものとして出ているので、実際とは違っているのだけど、Xがモデルになった「ZEX」と、LUNA SEAがモデルになった「LUNATIC MOON」というバンド名で出てくる。ヴィジュアル系バンドマンの神的存在として出てくる「ZEXのリーダーTOSHIKI」は、YOSHIKIとTOSHIとHIDEの3人が混ざってるモデルなのね。ZEXとLUNATIC MOONは格上で手の届かない存在なんだけど、他の後輩格バンドが主人公たちと関わってくる。
作者がその当事者だからこそ知り得るだろう、バンドをとりまく周囲の細かい描写とかファンの気持ちが、私が筋少ファンになって追っかけていた時の事を思い出して、そうだったな!と。懐かしいっていうかほろ苦いっていうか(笑)会場で出待ちや入り待ち、空港や駅で待ってた時のことや、ファン同士に派閥があったりね。打ち上げ参加は私は経験ないので、作中で詳しく書いてある打ち上げの様子はこんなだったんだーと初めて知ったところも。

主人公えりが、学校が詰まらなくて自分の居場所をバンドに求めるのだけど、バンドマンへの憧れ、やりたい音楽をやって夢を叶えていく姿に好きになったとか、でもファンである自分には何も確実なものがないと焦る気持ちは、私も同じだと思った。
ただ、えり達はバンドマンに「食ってもらう」ことで自分が認められると思ってしまうので、そこは私と違うけど。間違っているのはどこかで分かっていても辞められなくなってしまうのね。「なんで世界はバンドマンと私たちだけじゃないんだろう」って思うのが、ピュアなんだけど、考えが足りないというか。結局、大人になるにつれ現実の暗部にひきずりこまれる。


間違いっていうと私も違う方向でまずいことをして、仲間に嫌われて追っかけ上がってしまった。えりは一度友達と絶交されちゃうけど、仲直りするのね。だけど私は結局当時の追っかけ仲間とはみんな付き合いがなくなってしまった。
筋少が復活したから、みんなどこかでまたライブ行ったり、聴いたりしているのかなーと、思ったりした。


ヴィジュアル系バンドに惹かれるのが良くなかったかっていうと、そうではなくて。夢を持たずに漫然と生きている学校の同級生に合わず、周りの大人に言われる事が信じられない。生きる希望も無くなっていたときにバンドに出会い、生きる力をもらった。出会わなかったら自殺していたかもしれない。バンドマンとその音楽が好きになって、大事にする気持ちが自分が自分らしく居られる。そういう思いが詰まっている小説です。